2010/12/26

クリスマス

我が家でも家族3人のクリスマス会を開きました。
今年はどういうわけか、小生が料理を担当することになりまして、
12月25日の午後はずっと料理をしておりました。ホームベーカリーが大活躍でした。

メニューは、マルゲリータピザ、サルディーニャピザ、サーモンとモッツァレラチーズのサラダ、フライドチキン、イングリッシュマフィンです。


そして今年は、Gramercy New Yorkのパブロアケーキをいただきました。
ホールのケーキを家族で分け合って食べるのは楽しいですね。

今年も皆様に大変お世話になりました。ありがとうございました。
皆さんよいお年をお迎えください。
また来年もどうぞよろしくお願いします。

2010/12/19

American Journal Expertsが日本語→英語翻訳サービスを開始

満を持してかどうかわかりませんが、英語論文のプロの校正会社として定評のあるAmerican Journal Expertsが日本語→英語翻訳サービスを開始しました。
この会社では、英語の校正(editing)、論文を読んでの批評(review)を提供していました。他の言語ではすでに翻訳も手がけていましたが、ついに、日本語でも翻訳をするようになりました。果たして実力はいかに。

http://www.journalexperts.com/jp/translation
以下、ページの引用です。

2010/12/02

ネイルエキスポ2010

11月28日に東京ビックサイトで開催されたネイルエキスポ2010に行ってきました。
ネイルエキスポ2010は国内外のジェルネイルの会社が一堂に会して、新製品の発表、ネイル技術のコンテスト、格安販売などを行う展示会です。

http://nailevent.jp/nailexpo10/

紫外線硬化樹脂をネイルに使うという技術的な観点から、大きなトレンドとして印象に残った点を挙げます。

  • ジェルネイルの光源は紫外線ランプからUV LEDへ
  • 熱で接着するフィルムタイプのものがお手軽ネイルとして普及
  • 瞬間接着剤のような空気に触れて硬化する紫外線ランプのいらないジェルネイルが出現(2011/2/6に訂正しました)

なかでもUV LEDへの移行は確実なような気がします。ネイルエキスポでは各ブースでネイルを施してくれるのですが、UV LEDを使用しているブースは人気であるにもかかわらず、列がほとんどできていませんでした。UV LEDは紫外線ランプに比べて光強度が強いので、硬化時間が短く、施術時間も短くなるためではないかなと思いました。

ただし、強い光を当てればその分発熱速度は高くなり、温度上昇も激しくなるので、安全性へのケアはこれまで以上に重要になると言えます。

「反応系のレオロジー:電子機器用材料を中心にして 」渡辺先生のご講演

TAインスツルメントの第4回レオロジーセミナーで化学研究所の渡辺先生のご講演を拝聴しました。今回は反応系レオロジー:電子機器用材料を中心としてというお題でのご講演ということで、線形粘弾性からゲル化についてまで2時間にわたり熱心なご講演を拝聴することができました。

ご講演の最後の数枚のスライドで、硬化性樹脂の残留ひずみや応力を解析されている研究者の論文(Nishimura & Nakagawa, Heat Transfer-Asian Research, 31, 194 (2002), 日本機械学会論文集(B編), 66, 2718(2000))を紹介されていました。その際に、しきりにChemEの研究者がそのような仕事をされているということをおっしゃっていました。これはレオロジーの手法以外にも様々な解析手法を組み合わせて結論を導いていくことの大切さを解かれていたのだと思いました。

小生は紫外線硬化樹脂の硬化挙動の評価にレオメータと自作の解析ソフトで挑んでいます。しかし、高速で発熱の顕著な反応の紫外線硬化樹脂ではひずみと応力の関係だけでは解析は難しく、FT-IRやPhoto DSCでの解析も欠かせません。これら結果を結びつけて理解するためには、ChemE的なアプローチが重要であると小生も思っています。

2010/10/31

アドバンスト・メディア社長 鈴木清幸氏の講演

本日(2010/10/30)は私の所属する化学工学教室の同窓会(洛窓会)の総会、講演会、懇親会がありました。講演会では3人の方にお話いただきましたが、特に印象に残りましたアドバンスト・メディア社長の鈴木清幸氏のご講演について書きたいと思います。

講演題目 ソフトコミュニケーションの時代へ ~ 人中心のコミュニケーションの実現 ~

鈴木氏は人工知能による音声認識ソフトを開発販売する会社(http://www.advanced-media.co.jp/company/index.html)の社長をされている方です。

音声認識ソフトといえば、Microsoft WORDやWindows Vistaにも搭載されており、それほど珍しいものではないと思っていたのですが、アドバンスト・メディア社が開発しているAmiVoiceは事前にソフトに学習させる必要が無く、いきなり高い認識精度で音声をテキストに変換できるそうです。また、PCというキーボードやマウスが主体の入力デバイスが使えない、携帯電話や医療現場、工事現場などで端末に話しかけるだけで文章が作成できる状況を想定してシステムが作られています。

ご講演を拝聴していて面白いなと感じたところは、単なるソフトウェアベンダーではなく音声認識ソフトを核としたビジネスモデルを構築しているところです。

ビジネスモデルの中核にあるのは、人中心のソフトコミュニケーションという考え方で、人間の自然な動作によりコンピュータを操作しコンピュータに補助をさせるという考え方のようです。

アドバンスト・メディアのホームページにも同じ内容が紹介されていますが、音声認識ソフトを使って、議会の議事録を作成したり、保険のコールセンターの支援システムを作成したり、お医者さんのカルテや所見などを入力する補助をしたりするシステムが構築されています。それぞれの専門分野ごとに専門用語が異なるので、分野ごとに特化した辞書を用意することで変換効率を高めて実用化しているようです。お医者さんのシステムでは、お医者さんがこれまでキーボードに入力していたよりも早く入力できるようになり、残業が無くなり、より多くの患者さんを診察できるようになったとか。

保険のコールセンターの支援システムでは、コールセンターの人が正確な表現で保険の内容を説明しているかどうかを監視したり、契約の際は、言い忘れがないように、画面上にまだ説明していない内容が表示されていたり、お客様に住所や電話番号の入力を求めるときは、会話の内容がその部分に移った際に、会話の内容を音声認識ソフトが自動的に理解し、画面に表示するなどのデモを見せていただきました。

これからのビジネスターゲットは、医療・介護だそうです。介護従事者は介護保険ための膨大な書類作成があり、実際の介護以外の事務作業に忙殺されているようです。この作業を音声認識ソフトによる音声→テキストの変換と、変換されたテキストの人間による修正と、音声を発した人の承認により、介護従事者がキーボードをたたかなくても書類が作成できるシステムをオンライン(ASP)で構築するようです。

他にも、日本語で携帯情報端末に話しかけると英語で翻訳した内容がしゃべり出されるなど、お~と思わされるような技術でした。

音声認識ソフトという核がしっかりしているからこそできるのでしょうが、自分たちの技術をいかにしてビジネスに結びつけるかというアントレプレナーならではの発想と行動力を感じた講演でした。技術とビジネスが結びつかないとやっていておもしろくないですものね。

まだまだ音声認識ソフトは進化していくのでしょうが、チューリングテストにパスする人工知能が生まれる日も近いのでしょうか。そんな人工知能に、漫才の一つでもしてもらいたいものです。

以下のソフトは万人向けに作られているので、特化したアプリケーションのものよりは認識率は低いと思われますが、ご紹介します。



2010/10/25

Google PageRankの数理

大学の生協でGoogle PageRankの数理という本を購入しました。共立出版からハードカバーで出版されています。そこいらのビジネス本とは全然違う、数理のにおいがぷんぷんする良書です。

この本はGoogleのページの順位づけがどのような理論に基づいて成されているのかを大学で線形代数を教えている情報科学の教授が書いた本です。webページのリンク構造を線形代数(行列)で表し、ページのランク付けを線形代数の固有値問題に落とし込んでいる(途中略)ところが実に爽快です。大学の学部で線形代数や統計確率の抽象的な講義を受けてもそれがどのように実社会に役に立つのかはなかなかわからないものです。

しかしこの本では、線形代数でGoogle方程式を記述しそれを解くことでページのランク付けを行うという明快なアウトプットがあります。大学2年か3年生くらいの数学をベースにしているので、是非読んでみてください。



2010/10/24

ボード設計者のための分布定数回路のすべて

ボード設計者のための分布定数回路のすべて 碓井有三著(自費出版)
http://home.wondernet.ne.jp/~usuiy/book/book.htm
という本を紹介させていただきます。

この本は電気回路を基板に組み付けるための設計者が理解しておかなければならない
反射やクロストークの説明が成されています。特徴的なのは、分布定数系の偏微分方程式をラプラス変換によって常微分方程式に変換してから解いているところでしょうか。実に明快で読みやすい本です。私のような電気が専門ではない人間にとっては、丁寧に書かれているこの本で色々と勉強させていただいております。特にだ9章のギガビット転送の線路損失の顕在化とのころが参考になりました。

ホームベーカリー

購入したホームベーカリーが金曜日(10月22日)に家に届きました。私は学生時代にパン屋に修行に行ったりと、以前からパン作りに興味があったので、久しぶりに昔のことを思い出しながら、この週末は、パン作りに励みました。ちょうど両親が京都まで来てくれていたので、できたてのパンを振る舞うこともできました。パン屋さんのパンが簡単に作れて両親も好評でした。

ところで、パンって発泡現象ですよね。
イーストから出てきた炭酸ガスが気泡になって膨らむわけで、小麦粉は熱による架橋反応を起こして、最終的な気泡の形状や連通率が決まるはず。
そういえば、フランスにはパンの3次元発泡シミュレーションをやっている人がいたなぁ。パンを食べながら発泡のことを考えると、日頃の研究の大変さを忘れますね。

パンには色々なバリエーションがあります。
小麦粉だけでも、スーパーでふつうに売っている日清製粉のものや、
米国やカナダ産のゴールデンヨットという超強力粉や、北海道産の
春豊や春よこいなど使う小麦粉によってもふくらみ方やおいしさが違います。
バターの種類や、レーズンやクルミを入れてもいいですね。
こういう食材が手にとって買える店が京都伊勢丹の地下2Fにできました。
富沢商店http://www.tomizawa.co.jp/
便利ですよ。

うちで購入しましたホームベーカリーです。初めてでもとってもおいしくできるので、
パン好きの人は気に入ること間違いなし。
 


これからは食べ物関係の内容も入れていきますね。

2010/10/07

ご聴講のお礼

本日、関西TLOの技術交流クラブにて講演させていただきました。

講演タイトル Over 1 Gbps時代の多孔型低誘電率膜の開発
講演内容 
携帯電話やテレビなどは今後もますます高性能化が進むと考えられ、短時間に多くの情報を処理したり表示したりできるようになる。携帯電話やテレビの中では、高性能化に伴い器内に流れる信号のビットレートが増加する。このビットレートの増加を陰で支えている材料が、エレクトロニクス用低誘電率材料である。本公演では、次世代の低誘電率材料として注目されている多孔型フレキシブル低誘電材料について、最新のプロセスとその用途展開について説明する。

多くの方々にご参集いただきまして誠にありがとうございました。今後とも研究を続けて参りますので、どうぞよろしくお願いします。

紫外線硬化樹脂の実時間解析

紫外線硬化樹脂の実時間解析法のうち小生の研究チームが得意としている測定方法についてまとめました。

紫外線硬化樹脂の実時間解析法
測定法 膜厚 温度 測定量 応答性・時間分解
Real time FT-IR 10 um 非等温 C=Cの吸光度 速い 30 ms
Real time FT-NIR 5 mm - 0.1 mm 非等温 C=Cの吸光度 速い 60 ms
Photo DSC 0.1 mm 等温 発熱速度 遅い 0.1 s
Photo rheometer 0.1 mm - 1 mm 非等温 弾性率、粘性率 やや速い


これらの測定方法を駆使して、4つの測定法の結果を再現可能な統合的な反応拡散硬化モデルの構築について研究しています。このようなモデルを作ることで、実際の硬化条件に近いシミュレーションを行うことが可能になります。

特に、以下のことが明らかになれば紫外線硬化樹脂の適用範囲はさらに広がると思います。
  • 硬化メカニズムの解析(収縮、発熱)
  • 材料探索の支援(多成分系での精度よいモデル)
  • 残留モノマーの低減
  • 硬化物の力学物性とネットワーク構造の関係

2010/10/05

ピーク分離プログラム

real time FT-IRで紫外線硬化樹脂の反応速度を解析しています。紫外線硬化樹脂は溶媒を含まないため試料のモル吸光係数が高く、アクリレートのピークがしっかりとベースラインまで分離された状態で測定を開始することは容易ではありません。例えば、下の図のようにアクリレートのC=Cに由来する1630 cm-1のピークは、アミドやカルボニルのC=Oとカップリングしてしまいます。このようなときに、ピーク分離を行うとスペクトルの解析が容易になります。

そこでreal time FT-IRで測定された大量のデータを一括して自動的にピーク分離を行うプログラムを作成しました。このプログラムは、複数のガウス関数でピークやショルダーを表して、Levenberg–Marquardt法で測定されたスペクトル形状にもっとも合うように各ピークのピーク位置、高さ、幅を決めるプログラムです。

図 ピーク分離プログラムで分離されたピークとその重ね合わせによって得られたスペクトル


実行環境はMATLAB7.1でOptimization Toolboxのlsqcurvefitという関数が必要です。また、入力ファイルはBruker Optics VERTEX 70のOPUSが出力したスペクトルのdptフォーマットです。

dptフォーマットは、
波数1 吸光度(時刻0) 吸光度(時刻1)  ....
波数2 吸光度(時刻0) 吸光度(時刻1)  ....
...
です。

2010/09/12

多孔型のフレキシブル低誘電率膜の技術的課題

今回は、小生が研究開発している多孔型のフレキシブル低誘電率膜の技術課題をまとめてみました。ポリイミドなどの絶縁層を多孔化して絶縁層の誘電率を下げて、高周波領域において抵抗損失を低下させるというアイディアは、かなり昔から実現に向けて研究されてきました。しかしながら多孔型のフレキシブル低誘電率膜がなかなか実用化されていない原因は、およそ図に示すような課題があるからです。
低誘電率膜は一般に絶縁層として、二枚の銅箔の間に挟まれて使われます。このため多孔化により、絶縁層の表面に表皮孔ができると高周波領域において表皮効果に伴うインピーダンスの増加が起こり、さらに銅箔との密着性も低下します。
また、表皮孔と内部の孔が連通していると、連通孔と呼ばれる孔ができてしまいます。この孔にエッチングやメッキ処理の際につかわれる水が滞留してしまうと上下の銅箔が短絡してしまうおそれがあります。
この他にも膜厚程度の孔が偶然にも形成されてしまうと、気温の変化や折り曲げにより気泡は膨張と収縮をおこしてしまい銅箔との密着強度の低下や、誘電率のムラを生じてしまいます。
さらにスキン層と呼ばれるような多孔化されていない層が多い場合は、多孔化による低誘電率の低下が効果的に現れません。
多孔化によりこれだけの課題が出るわけですから、なかなか実用化への道は険しく、個々の課題のブレークスルーだけでなくシステム全体の最適化が重要となります。理想的な多孔型のフレキシブル低誘電率膜は、平滑な表皮・孔の微細化(100 nm~)、膜全体に均一な孔層があることといえます。
我々の技術ではこれらの課題を克服すべく新しいアイディアのもと取り組んでいます。

Posted by Picasa
図 多孔型のフレキシブル低誘電率膜の技術課題

2010/08/21

CTC講演会

本日(2010/8/21)はCTCで講演して参りました。

CTCとはCore to Coreプログラムの略で、JSPSの先進粒子ハンドリング科学というプログラムで、日本人とアメリカや、オーストラリア、欧州の若手研究者と共同研究などが身のある交流をするものです。詳しくは、こちらをご覧ください。

講演はすべて英語で、質疑応答も英語なので、久しぶりに舌べらが疲れました。

再生研の藤田さんのご講演では、ナノ・マイクロサイズの凹凸への細胞の接着性についてや、ナノファイバーの上の細胞の運動について共焦点レーザ顕微鏡とTEMを駆使した大変興味深い研究発表をしていただきました。

""Freezing" Transient Structures of Phase Separation in Polymer Solutions"
Dr. Kentaro Taki, Kyoto University, Japan

"Analysis of Cell Responses to Fine-Structured Materials"
Dr. Satoshi Fujita, Kyoto University, Japan

"Aggregates of Colloids: Coupling Structural and Mechanical Properties"
Dr. Günter Auernhammer, Max-Planck Institute for Polymer Research, Germany

2010/08/17

UVジェルネイル

UVジェルネイルというネイルの方法をご存じでしょうか?

紫外線硬化樹脂を爪の上に塗り、硬化させることで、一種のマニキュアのようなオシャレをする方法です。ラメや☆などを爪の上にきれいにのせることができ、透明で硬いトップコートの厚塗りができます。

私はUVジェルネイルをすることはないのですが、卒論の女子学生が「UVジェルネイルって知ってますか?あれってすごくはがしにくいんですよ」と質問されてから、UVジェルネイルについて調べるようになりました。

ネットで検索すると色々とヒットして、どうやら専門のネイルサロンに行かなくても家でUVジェルネイルができるようです。UVジェルネイルの主成分はアクリレート系のモノマーですから、肌への刺激や体への悪影響などが懸念されますが、一般向けとしてロフトなどで売っています。

そこで、誰もが安全に使えて、きれいなネイルができるUVジェルネイルの開発を目指して、UVジェルネイルの反応速度解析や特定の条件で剥がれやすくなるモノマーの探索、安全な硬化条件などを明らかにするための研究をすることになりました。





2010/08/08

夏期休暇

2010/08/06-07に和歌山県の白浜に夏期休暇で出かけてきました。

京都の桂川駅からローカル線で新大阪まで行き、白浜までは特急くろしおで移動しました。白浜駅に12:00について、そこからバスで白良浜まで行き、いきなり海水浴をしました。
1歳の娘にとって初めての海水浴です。喜んでもらえると思ったのですが、結果はぎゃんなきでした。海に入ったとたんに、わんわん泣いてしまいました。下の写真は、すこし笑顔な貴重なショットです。

送信者 20100724-20100807

2010/07/30

メディカルエレクトロニクスに於ける実装材料、プロセスとその応用


2010/07/30に東京工業大学デジタル多目的ホールにて行われましたメディカルエレクトロニクスに於ける実装材料、プロセスとその応用を聞いてきました。この講演会は、小生も幹事をさせていただいている化学工学会のエレクトロニクス部会が主催しました。

化学工学会のエレクトロニクス部会は、拡散や反応の伴う化学プロセスとしてエレクトロニクスの製造プロセスをとらえて、材料開発とプロセス開発をシームレスにつなぐための最新技術について学びたい人たちが集まっている部会です。今回のメディカルエレクトロニクスについての講演会も、一見すると化学工学とは少し異なる技術領域のように見えてしまいますが、エレクトロニクスと化学工学がわかるとメディカルエレクトロニクスも化学工学の要素を見つけることができます。


1. 体内で用いる医療デバイスの高機能化、多機能化 東北大学 芳賀洋一

2. カプセル内視鏡の技術 オリンパスメディカルシステム社未来画像機器開発部

カプセル内視鏡について、オリンパス工業の胃カメラの開発まで遡っていただいて、最新の内視鏡、そしてカプセル内視鏡についてご講演していただきました。最新の内視鏡では、Narrow Band Imagingという可視光線のうちのある狭い波長のみを光源として観察する手法が実用化されていることに驚いた。可視光線は波長の短い紫色から長い赤色まで多数の波長が混ざり合っているが、波長の短い光は器官の表層までしか届かないのに対して、長い光は奥まで届くことができる。これを利用して、可視光を短い光から長い光まで狭い波長範囲で区切り、それぞれの光を当てて撮像すると表層から深部までの毛細血管や腫瘍を鮮やかに撮影できることが紹介されていた。この他にも限りなく肉眼に近い像が獲られるようにハイビジョン撮影、粘膜深部の情報を可視かできる赤外線撮影、病変の発見を容易にする蛍光撮影が可能なようである。

さて、カプセル内視鏡の構造は、直径が11 mm、長さが26 mmである。カプセルの中には、CCDカメラ、LED光源、酸化銀電池、無線アンテナ、制御回路基板が使われている。回路基板はリジッド-フレキの多層板のようである。無線アンテナの出力は電池の持ち時間を長くするために低く抑えられており、患者は診断中に6枚のアンテナを体に貼り付ける必要がある。アイディア自体はミクロの決死圏などのSFにもみられるように、あるにはあったが、必要な要素技術(無線の小型化、CCD、電池の小型化)の発展を待つ必要があった。

カプセル内視鏡を開発するに当たって、前例のない医療機器であるため薬事法で承認されるために多くの治験を行う必要があった。特に、腸が数ミリまで収縮してしまうような難病の患者さんに本来使いたいのであるが、カプセルが詰まるおそれがあるので、適用対象から外す必要があった。

第一世代(2005年発表)受動型

  • 腸の運動によりカプセルは移動するため自走できないため目的のところに動かしたりとどめたりすることができない。
  • 観察したい方向に向けられない。
  • 腸をすべて見終わるのに8時間かかり、患者と医師に大きな負担
  • 診断用の検体が採れない
  • 治療用の機能がない

第二世代 誘導型
外部磁場を利用して、回転させながら移動可能になり、胃などの大きな空洞がある器官にも使用可能
第三世代 診断・治療型
薬剤を散布するなどの治療を行うことが可能
第四世代 自動診断・治療型
医師の管理の下に自ら考えて自走し、診断と治療を行うことが可能
正直、8時間もアンテナを体に貼り付けられて、カプセルが腸の中を通り抜けるのを
待つのはしんどそうだなと感じました。これから第二世代や第三世代が実用化されると身近な医療として普及してくるのかもしれない。

3. アトーフェムトリットル微少液体の計測、操作技術 居村史人 産業技術総合研究所

4. 血糖値センサーの現状とユビキタス化 村上裕仁 広島大学

5. 唾液バイオセンサによる非侵襲的診断 山口昌樹 岩手大学

2010/07/21

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら

2010/07/21にこの本を購入して、私にはとても珍しく、移動中のその日のうちに読み終えました。ときおり目頭を熱くしながら、みなみの物語に引き込まれてしまいました。夏の暑い時期にさわやかな青春小説を読みたいならこの一冊でしょう。




2010/07/15

古賀忠典氏の講演

2010年7月15日に古賀忠典氏の講演を拝聴する機会に恵まれました。
古賀氏はNew York州立大学のStony Brook校に奉職されている方です。
超臨界二酸化炭素が溶解した高分子薄膜の物性について、X線や中性子線による測定を用いて高分子薄膜表面が二酸化炭素により過剰に膨潤している様子を実験的に示されていました。


このほかにも、高分子薄膜上にナノ粒子がブリーディングしてくることや、シリンドリカルなブロック共重合体を基板に対して垂直に立てることが高分子薄膜を超臨界二酸化炭素にさらすだけでできることが紹介されました。精密なSAXSと中性子散乱の測定による基礎的な部分と、それを生かした応用研究まで幅広いテーマをご講演いただきました。ありがとうございます。


私は超臨界二酸化炭素を用いた発泡成形をテーマとしていましたが、超臨界二酸化炭素の特長を生かした研究といえば K. Taki, Y. Waratani, and M. Ohshirna, Macromol. Mater. Eng., Preparation of nanowells on a PS-b-PMMA copolymer thin film by CO2 treatment, 293(7), 589-597 (2008).くらいで、なかなか超臨界二酸化炭素の性質を生かした研究は難しかったです。古賀氏の講演を拝聴して、また少し超臨界のおもしろさを思い出しました。

2010/07/10

フレキシブル低誘電率膜

NEDOの産業技術研究助成事業から補助を受けて研究させていただいている「UV硬化樹脂の光誘起相分離を利用した革新的フレキシブル低誘電率膜成形プロセスの開発」の研究成果を新聞に載せていただきました。

日刊工業新聞の記事

正直申し上げまして、まだまだな研究成果ではあるのですが、ご興味をお持ちの方がいらっしゃいましたらお気軽にご連絡ください。

フレキシブル基板やフレキシブルケーブルの基材の低誘電率化は高周波数化への対応としてこれまでにも多くの研究例があります。特にポリイミドの低誘電率化については、化学構造の改良と多孔化のための研究開発が続けられてきました。多孔化では、材料を軽量化することにより著しい低誘電率化を実現できますが、同時に機械的強度の低下、耐湿性の低下、密着性の低下などが起こります。

また、実際に実装メーカに使っていただこうとしても、実装メーカは分布定数形による電気回路の設計技術で高周波化により発生する様々な問題を解決されているので、様々な物性の低下が起こる材料はなかなか採用してもらえないのが現状のようです。

また、高速・大容量通信のための高周波数化が必要と考えられていますが、光インターコネクト機器内無線技術など銅線でつなぐよりも時として高いスループットが得られる電送技術も開発されています。

こうした中でフレキシブル低誘電率膜に実装された導線で高速・大容量な伝送を行うための材料製造プロセスの開発の意義を考えていかねばなりません。光も無線も結局は電気信号に変換されるので、信号は銅線を通るのだから、低誘電率化は王道であると私のメンターは教えてくれています。銅配線が光や無線に敵うためには、コストと小さな実装空間そして設計の容易さなどがあげられると思われますが、孔を開けたことによるメリットがデメリットを上回るように、デメリットの克服とアプリケーションの創成も必要になってくるものと考えています。

泉谷渉 氏(産業タイムズ社 社長)のご講演

本日(7/9)は、エレクトロニクス実装学会の関西ワークショップにて、産業タイムズ社長の泉谷渉氏の講演を聴いてきました。氏の記者ならではのご講演には大変感銘を受けました。講演時間の90分間がこんなにも短く感じられたのはとても久しぶりでした。

ご講演のタイトルは、
「環境エネルギー革命は半導体の世界を変える」
でした。

2010/07/07

英語表現

私がよく間違える英語表現をまとめました。

1. in the course of は during
2. 冠詞が抜けているか使い方を間違えている。
3. 省略語が定義されておらず、統一性がない。
4. 単語の単数と複数形が曖昧である。
5. コンマの使い方が統一されていない。
6. due toとbecause ofが互換的に使われている。
7. 間違った前置詞が時々使われている。
8. 間違った動詞の時制が使われている。
9. thatとwhichが曖昧である。
10. 複合形容詞のハイフンが抜けているか適切でない。
11. 単語の順序を入れ替える必要があるものがある。
12. 必要なコンマが抜けている。
13. よりフォーマルなin whichの代わりにwhereが使われている。

紫外線硬化樹脂の硬化の様子

紫外線硬化樹脂は、紫外線を照射すると数秒から数分でかたまる樹脂のことです。
この様子をわかりやすく撮影した映像が下の映像です。

開始から8 sくらいまでで、紫外線硬化樹脂がガラス管についても
すぐにたれ落ちてしまう様子を撮影しています。

11 sで真ん中に青い光が現れますが、これが紫外線を含む光です。

18 sからでは、先ほどの紫外線硬化樹脂を光に当てています。

23 sくらいまでで樹脂が硬化して、樹脂が垂れなくなっていることがわかると思います。
この樹脂はその後ガラス管を1回転させても垂れなくなります。

紫外線硬化樹脂の硬化の様子

樹脂成分 ウレタン系ジアクリレート/反応性希釈剤/光開始剤
光源 水銀キセノンランプ 200W

2010/07/04

英文校正

論文の草稿が完成すると英語の文法チェックのために
ネイティブの校正を受けるようにしている。私が利用しているのは、
American Journal Experts というサイトで、英語が母国語の方で
大学や大学院を卒業した人が私の英語を見てくれる。Wordの校正機能を
使って、びっしりと校正してもらえる。

正直、自分の英語はまだまだであるので、校正してもらった
内容を別のファイルに写し取りながら、一字一句辞書を見ながら
勉強している。

今回の校正で多かった間違えを私の備忘録として書いておきます。
  1. in the course of はduring
  2. 校正前
    The dissolved CO2 became supersaturated, and CO2 bubbles started to nucleate in the course of depressurization.
    校正後
    The dissolved CO2 became supersaturated, and CO2 bubbles started to nucleate during depressurization.
  3. where は適切な前置詞を伴うwhichで
  4. 校正前
    Each measured spectrum was subtracted from the final spectrum where the monomers were polymerized completely.
    校正後 Each measured spectrum was subtracted from the final spectrum in which the monomers were polymerized completely.
  5. due toをbecause ofに
  6. 校正前
    In such a case bubble nucleation would be facilitated, but the bubbles could not retain their shape due to the low polymer viscosity.
    校正後
    In such a case bubble nucleation would be facilitated, but the bubbles could not retain their shape because of the low polymer viscosity.
  7. because ofをdue toに
  8. 校正前
    The foaming of rubbery-state polymers can create micron-sized porous films because of their high elasticity.
    校正後
    The foaming of rubbery-state polymers can create micron-sized porous films due to their high elasticity.

2010/06/28

紫外線硬化樹脂の硬化過程追跡用のPhoto DSC

 
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紫外線硬化樹脂の硬化過程追跡用のPhoto rheometer

 
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紫外線硬化樹脂の反応過程を追跡可能なreal time FT-IR/NIR


Posted by Picasa図1 real time FT-IR/NIR(実時間フーリエ変換赤外/近赤外分光光時計)

分光器 Bruker Optics VERTEX 70, Rapid Scan option,
仕様 4000 cm-1 ~ 400 cm-1を8 cm-1の間隔で33 msに1回スキャン
干渉系 RockSolid(R)干渉計
検出器 MCT(液体窒素冷却)
赤外光学系 赤外光は試料を透過して減衰
UV照射光学系 水平に置かれた試料に、30°からUV光を照射(室温から100℃まで測定可能)
UV光源 Omnicure S2000

図2 ウレタンジアクリレート/N-ビニルピロリドン/TPO混合系のUV照射前後の吸光度変化

図3 ウレタンジアクリレート/N-ビニルピロリドン/TPO混合系の6000 cm-1付近の吸光度変化



2010/06/27

S.M. Lindsay, Introduction to Nanoscience

2010/06/24にS.M. Lindsay, Introduction to Nanoscience, Oxford (2010)という本を購入した。

1年半前に、ある大学の採用試験を受けたときにそこがナノサイエンスの研究所で、あなたの研究のどこがナノサイエンスの発展に寄与できるのかという質問をもらい、まともに答えられなかったことから、未だにその無念さとともにNanoscienceとはどんなものなのだろうと良書を探していた。

そのころは発泡成形でナノの孔を作ることに夢中になっていたので、ただサイズがナノメートルオーダーなら何でもNanoscienceだみたいなこじつけをしていた。
その後、Amazon.comなどで検索すれば何冊か入門書が見つかったが、中身がよくわからないので購入するまでには至らなかった。

NanoscienceはFeynman教授のCaltechでの講演に端を発すること、カーボンナノチューブやナノ粒子などサイズを小さくすることで、バルク体では現れない特性が表れるということくらいの知識はあったが、それらが具体的にどのような物理の法則で説明されるのかについて、数式を交えて勉強していなかった。

Lindsay教授のIntroduction to Nanoscieneは、手にとってみると、小生が欲しかったものにとても近いものであった。学部上級生から大学院生向けに書かれている。物理屋さんらしく、Feynman教授の講義をそのままAppendixに載せている。そして基礎として量子力学と統計力学を130ページあまりさいて説明している。説明はわずかな数式を交えつつ、図を多用してわかりやすく書かれている。そのあとは、SPM(走査トンネル顕微鏡)やTop downとBottom up型のナノ構造作成技術つについて、こちらも数式を交えつつ平易に書かれている。そのあとは、ApplicationについてElectronicsやナノ構造、ナノ生物学などについてこちらも必要とあらば数式を交えつつ、説明がなされている。

Nanoscienceの背景にある物理の平易な入門としてはおすすめ。


光あてて樹脂かたまる日記

このブログを更新するのは、約1年ぶりです。
約1年も何もせずたちましたので、ブログタイトルを変えてみました。
新タイトルの「光あてて樹脂かたまる日記」とは、小生の専門分野である光硬化樹脂と
雨降って地固まるをかけました。

広辞苑によると、雨降って地固まるは
「変事があってかえって前よりよく基礎が固まることのたとえ。」
とあります。

今の自分は、今まで研究してきた発泡成形に関する経験を生かして
新たな研究対象を創出する大事な変化の時です。このことわざのように、
変化があってかえって前よりよく基礎が固まることを目指して、
変化に対する苦痛・恐怖を克服していきたいと思います。