2010/09/12

多孔型のフレキシブル低誘電率膜の技術的課題

今回は、小生が研究開発している多孔型のフレキシブル低誘電率膜の技術課題をまとめてみました。ポリイミドなどの絶縁層を多孔化して絶縁層の誘電率を下げて、高周波領域において抵抗損失を低下させるというアイディアは、かなり昔から実現に向けて研究されてきました。しかしながら多孔型のフレキシブル低誘電率膜がなかなか実用化されていない原因は、およそ図に示すような課題があるからです。
低誘電率膜は一般に絶縁層として、二枚の銅箔の間に挟まれて使われます。このため多孔化により、絶縁層の表面に表皮孔ができると高周波領域において表皮効果に伴うインピーダンスの増加が起こり、さらに銅箔との密着性も低下します。
また、表皮孔と内部の孔が連通していると、連通孔と呼ばれる孔ができてしまいます。この孔にエッチングやメッキ処理の際につかわれる水が滞留してしまうと上下の銅箔が短絡してしまうおそれがあります。
この他にも膜厚程度の孔が偶然にも形成されてしまうと、気温の変化や折り曲げにより気泡は膨張と収縮をおこしてしまい銅箔との密着強度の低下や、誘電率のムラを生じてしまいます。
さらにスキン層と呼ばれるような多孔化されていない層が多い場合は、多孔化による低誘電率の低下が効果的に現れません。
多孔化によりこれだけの課題が出るわけですから、なかなか実用化への道は険しく、個々の課題のブレークスルーだけでなくシステム全体の最適化が重要となります。理想的な多孔型のフレキシブル低誘電率膜は、平滑な表皮・孔の微細化(100 nm~)、膜全体に均一な孔層があることといえます。
我々の技術ではこれらの課題を克服すべく新しいアイディアのもと取り組んでいます。

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図 多孔型のフレキシブル低誘電率膜の技術課題