2010/07/30

メディカルエレクトロニクスに於ける実装材料、プロセスとその応用


2010/07/30に東京工業大学デジタル多目的ホールにて行われましたメディカルエレクトロニクスに於ける実装材料、プロセスとその応用を聞いてきました。この講演会は、小生も幹事をさせていただいている化学工学会のエレクトロニクス部会が主催しました。

化学工学会のエレクトロニクス部会は、拡散や反応の伴う化学プロセスとしてエレクトロニクスの製造プロセスをとらえて、材料開発とプロセス開発をシームレスにつなぐための最新技術について学びたい人たちが集まっている部会です。今回のメディカルエレクトロニクスについての講演会も、一見すると化学工学とは少し異なる技術領域のように見えてしまいますが、エレクトロニクスと化学工学がわかるとメディカルエレクトロニクスも化学工学の要素を見つけることができます。


1. 体内で用いる医療デバイスの高機能化、多機能化 東北大学 芳賀洋一

2. カプセル内視鏡の技術 オリンパスメディカルシステム社未来画像機器開発部

カプセル内視鏡について、オリンパス工業の胃カメラの開発まで遡っていただいて、最新の内視鏡、そしてカプセル内視鏡についてご講演していただきました。最新の内視鏡では、Narrow Band Imagingという可視光線のうちのある狭い波長のみを光源として観察する手法が実用化されていることに驚いた。可視光線は波長の短い紫色から長い赤色まで多数の波長が混ざり合っているが、波長の短い光は器官の表層までしか届かないのに対して、長い光は奥まで届くことができる。これを利用して、可視光を短い光から長い光まで狭い波長範囲で区切り、それぞれの光を当てて撮像すると表層から深部までの毛細血管や腫瘍を鮮やかに撮影できることが紹介されていた。この他にも限りなく肉眼に近い像が獲られるようにハイビジョン撮影、粘膜深部の情報を可視かできる赤外線撮影、病変の発見を容易にする蛍光撮影が可能なようである。

さて、カプセル内視鏡の構造は、直径が11 mm、長さが26 mmである。カプセルの中には、CCDカメラ、LED光源、酸化銀電池、無線アンテナ、制御回路基板が使われている。回路基板はリジッド-フレキの多層板のようである。無線アンテナの出力は電池の持ち時間を長くするために低く抑えられており、患者は診断中に6枚のアンテナを体に貼り付ける必要がある。アイディア自体はミクロの決死圏などのSFにもみられるように、あるにはあったが、必要な要素技術(無線の小型化、CCD、電池の小型化)の発展を待つ必要があった。

カプセル内視鏡を開発するに当たって、前例のない医療機器であるため薬事法で承認されるために多くの治験を行う必要があった。特に、腸が数ミリまで収縮してしまうような難病の患者さんに本来使いたいのであるが、カプセルが詰まるおそれがあるので、適用対象から外す必要があった。

第一世代(2005年発表)受動型

  • 腸の運動によりカプセルは移動するため自走できないため目的のところに動かしたりとどめたりすることができない。
  • 観察したい方向に向けられない。
  • 腸をすべて見終わるのに8時間かかり、患者と医師に大きな負担
  • 診断用の検体が採れない
  • 治療用の機能がない

第二世代 誘導型
外部磁場を利用して、回転させながら移動可能になり、胃などの大きな空洞がある器官にも使用可能
第三世代 診断・治療型
薬剤を散布するなどの治療を行うことが可能
第四世代 自動診断・治療型
医師の管理の下に自ら考えて自走し、診断と治療を行うことが可能
正直、8時間もアンテナを体に貼り付けられて、カプセルが腸の中を通り抜けるのを
待つのはしんどそうだなと感じました。これから第二世代や第三世代が実用化されると身近な医療として普及してくるのかもしれない。

3. アトーフェムトリットル微少液体の計測、操作技術 居村史人 産業技術総合研究所

4. 血糖値センサーの現状とユビキタス化 村上裕仁 広島大学

5. 唾液バイオセンサによる非侵襲的診断 山口昌樹 岩手大学