2010/09/12

多孔型のフレキシブル低誘電率膜の技術的課題

今回は、小生が研究開発している多孔型のフレキシブル低誘電率膜の技術課題をまとめてみました。ポリイミドなどの絶縁層を多孔化して絶縁層の誘電率を下げて、高周波領域において抵抗損失を低下させるというアイディアは、かなり昔から実現に向けて研究されてきました。しかしながら多孔型のフレキシブル低誘電率膜がなかなか実用化されていない原因は、およそ図に示すような課題があるからです。
低誘電率膜は一般に絶縁層として、二枚の銅箔の間に挟まれて使われます。このため多孔化により、絶縁層の表面に表皮孔ができると高周波領域において表皮効果に伴うインピーダンスの増加が起こり、さらに銅箔との密着性も低下します。
また、表皮孔と内部の孔が連通していると、連通孔と呼ばれる孔ができてしまいます。この孔にエッチングやメッキ処理の際につかわれる水が滞留してしまうと上下の銅箔が短絡してしまうおそれがあります。
この他にも膜厚程度の孔が偶然にも形成されてしまうと、気温の変化や折り曲げにより気泡は膨張と収縮をおこしてしまい銅箔との密着強度の低下や、誘電率のムラを生じてしまいます。
さらにスキン層と呼ばれるような多孔化されていない層が多い場合は、多孔化による低誘電率の低下が効果的に現れません。
多孔化によりこれだけの課題が出るわけですから、なかなか実用化への道は険しく、個々の課題のブレークスルーだけでなくシステム全体の最適化が重要となります。理想的な多孔型のフレキシブル低誘電率膜は、平滑な表皮・孔の微細化(100 nm~)、膜全体に均一な孔層があることといえます。
我々の技術ではこれらの課題を克服すべく新しいアイディアのもと取り組んでいます。

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図 多孔型のフレキシブル低誘電率膜の技術課題

2010/08/21

CTC講演会

本日(2010/8/21)はCTCで講演して参りました。

CTCとはCore to Coreプログラムの略で、JSPSの先進粒子ハンドリング科学というプログラムで、日本人とアメリカや、オーストラリア、欧州の若手研究者と共同研究などが身のある交流をするものです。詳しくは、こちらをご覧ください。

講演はすべて英語で、質疑応答も英語なので、久しぶりに舌べらが疲れました。

再生研の藤田さんのご講演では、ナノ・マイクロサイズの凹凸への細胞の接着性についてや、ナノファイバーの上の細胞の運動について共焦点レーザ顕微鏡とTEMを駆使した大変興味深い研究発表をしていただきました。

""Freezing" Transient Structures of Phase Separation in Polymer Solutions"
Dr. Kentaro Taki, Kyoto University, Japan

"Analysis of Cell Responses to Fine-Structured Materials"
Dr. Satoshi Fujita, Kyoto University, Japan

"Aggregates of Colloids: Coupling Structural and Mechanical Properties"
Dr. Günter Auernhammer, Max-Planck Institute for Polymer Research, Germany

2010/08/17

UVジェルネイル

UVジェルネイルというネイルの方法をご存じでしょうか?

紫外線硬化樹脂を爪の上に塗り、硬化させることで、一種のマニキュアのようなオシャレをする方法です。ラメや☆などを爪の上にきれいにのせることができ、透明で硬いトップコートの厚塗りができます。

私はUVジェルネイルをすることはないのですが、卒論の女子学生が「UVジェルネイルって知ってますか?あれってすごくはがしにくいんですよ」と質問されてから、UVジェルネイルについて調べるようになりました。

ネットで検索すると色々とヒットして、どうやら専門のネイルサロンに行かなくても家でUVジェルネイルができるようです。UVジェルネイルの主成分はアクリレート系のモノマーですから、肌への刺激や体への悪影響などが懸念されますが、一般向けとしてロフトなどで売っています。

そこで、誰もが安全に使えて、きれいなネイルができるUVジェルネイルの開発を目指して、UVジェルネイルの反応速度解析や特定の条件で剥がれやすくなるモノマーの探索、安全な硬化条件などを明らかにするための研究をすることになりました。





2010/08/08

夏期休暇

2010/08/06-07に和歌山県の白浜に夏期休暇で出かけてきました。

京都の桂川駅からローカル線で新大阪まで行き、白浜までは特急くろしおで移動しました。白浜駅に12:00について、そこからバスで白良浜まで行き、いきなり海水浴をしました。
1歳の娘にとって初めての海水浴です。喜んでもらえると思ったのですが、結果はぎゃんなきでした。海に入ったとたんに、わんわん泣いてしまいました。下の写真は、すこし笑顔な貴重なショットです。

送信者 20100724-20100807

2010/07/30

メディカルエレクトロニクスに於ける実装材料、プロセスとその応用


2010/07/30に東京工業大学デジタル多目的ホールにて行われましたメディカルエレクトロニクスに於ける実装材料、プロセスとその応用を聞いてきました。この講演会は、小生も幹事をさせていただいている化学工学会のエレクトロニクス部会が主催しました。

化学工学会のエレクトロニクス部会は、拡散や反応の伴う化学プロセスとしてエレクトロニクスの製造プロセスをとらえて、材料開発とプロセス開発をシームレスにつなぐための最新技術について学びたい人たちが集まっている部会です。今回のメディカルエレクトロニクスについての講演会も、一見すると化学工学とは少し異なる技術領域のように見えてしまいますが、エレクトロニクスと化学工学がわかるとメディカルエレクトロニクスも化学工学の要素を見つけることができます。


1. 体内で用いる医療デバイスの高機能化、多機能化 東北大学 芳賀洋一

2. カプセル内視鏡の技術 オリンパスメディカルシステム社未来画像機器開発部

カプセル内視鏡について、オリンパス工業の胃カメラの開発まで遡っていただいて、最新の内視鏡、そしてカプセル内視鏡についてご講演していただきました。最新の内視鏡では、Narrow Band Imagingという可視光線のうちのある狭い波長のみを光源として観察する手法が実用化されていることに驚いた。可視光線は波長の短い紫色から長い赤色まで多数の波長が混ざり合っているが、波長の短い光は器官の表層までしか届かないのに対して、長い光は奥まで届くことができる。これを利用して、可視光を短い光から長い光まで狭い波長範囲で区切り、それぞれの光を当てて撮像すると表層から深部までの毛細血管や腫瘍を鮮やかに撮影できることが紹介されていた。この他にも限りなく肉眼に近い像が獲られるようにハイビジョン撮影、粘膜深部の情報を可視かできる赤外線撮影、病変の発見を容易にする蛍光撮影が可能なようである。

さて、カプセル内視鏡の構造は、直径が11 mm、長さが26 mmである。カプセルの中には、CCDカメラ、LED光源、酸化銀電池、無線アンテナ、制御回路基板が使われている。回路基板はリジッド-フレキの多層板のようである。無線アンテナの出力は電池の持ち時間を長くするために低く抑えられており、患者は診断中に6枚のアンテナを体に貼り付ける必要がある。アイディア自体はミクロの決死圏などのSFにもみられるように、あるにはあったが、必要な要素技術(無線の小型化、CCD、電池の小型化)の発展を待つ必要があった。

カプセル内視鏡を開発するに当たって、前例のない医療機器であるため薬事法で承認されるために多くの治験を行う必要があった。特に、腸が数ミリまで収縮してしまうような難病の患者さんに本来使いたいのであるが、カプセルが詰まるおそれがあるので、適用対象から外す必要があった。

第一世代(2005年発表)受動型

  • 腸の運動によりカプセルは移動するため自走できないため目的のところに動かしたりとどめたりすることができない。
  • 観察したい方向に向けられない。
  • 腸をすべて見終わるのに8時間かかり、患者と医師に大きな負担
  • 診断用の検体が採れない
  • 治療用の機能がない

第二世代 誘導型
外部磁場を利用して、回転させながら移動可能になり、胃などの大きな空洞がある器官にも使用可能
第三世代 診断・治療型
薬剤を散布するなどの治療を行うことが可能
第四世代 自動診断・治療型
医師の管理の下に自ら考えて自走し、診断と治療を行うことが可能
正直、8時間もアンテナを体に貼り付けられて、カプセルが腸の中を通り抜けるのを
待つのはしんどそうだなと感じました。これから第二世代や第三世代が実用化されると身近な医療として普及してくるのかもしれない。

3. アトーフェムトリットル微少液体の計測、操作技術 居村史人 産業技術総合研究所

4. 血糖値センサーの現状とユビキタス化 村上裕仁 広島大学

5. 唾液バイオセンサによる非侵襲的診断 山口昌樹 岩手大学

2010/07/21

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら

2010/07/21にこの本を購入して、私にはとても珍しく、移動中のその日のうちに読み終えました。ときおり目頭を熱くしながら、みなみの物語に引き込まれてしまいました。夏の暑い時期にさわやかな青春小説を読みたいならこの一冊でしょう。




2010/07/15

古賀忠典氏の講演

2010年7月15日に古賀忠典氏の講演を拝聴する機会に恵まれました。
古賀氏はNew York州立大学のStony Brook校に奉職されている方です。
超臨界二酸化炭素が溶解した高分子薄膜の物性について、X線や中性子線による測定を用いて高分子薄膜表面が二酸化炭素により過剰に膨潤している様子を実験的に示されていました。


このほかにも、高分子薄膜上にナノ粒子がブリーディングしてくることや、シリンドリカルなブロック共重合体を基板に対して垂直に立てることが高分子薄膜を超臨界二酸化炭素にさらすだけでできることが紹介されました。精密なSAXSと中性子散乱の測定による基礎的な部分と、それを生かした応用研究まで幅広いテーマをご講演いただきました。ありがとうございます。


私は超臨界二酸化炭素を用いた発泡成形をテーマとしていましたが、超臨界二酸化炭素の特長を生かした研究といえば K. Taki, Y. Waratani, and M. Ohshirna, Macromol. Mater. Eng., Preparation of nanowells on a PS-b-PMMA copolymer thin film by CO2 treatment, 293(7), 589-597 (2008).くらいで、なかなか超臨界二酸化炭素の性質を生かした研究は難しかったです。古賀氏の講演を拝聴して、また少し超臨界のおもしろさを思い出しました。