これは博士(工学)の仕事について紹介するコラムです。
ついに4回目ですね。今回は博士は士業?というタイトルをつけてみました。
士業というのはWikipediaによると
士業(しぎょう・さむらいぎょう)とは、日本における「-士」という名称の専門資格職業の俗称である。
例えば、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士、海事代理士などが士業と呼ばれる職業です。医師や薬剤師(Wikipediaにはないです)も士業のようです。
このような職業の人たちは、その仕事をするにあたりたくさん勉強して、国家資格を取得して、国による必要な研修を受けた後、国による免許をもらい仕事を始めることができます。すなわち国家がそのひとたちの能力を免許という形で保証しているわけです。
そのひとに能力がなくなったり、人格的に問題がある場合は、士業を規定している法律により、免許が取り上げられてしまうこともあります。士業の免許を得た人は、よほどのことがない限り、生活の糧となる仕事を始めること(就職したり開業したり)ができます。
また、それぞれの職業に応じた特別な権限(個人情報の請求権や診断書の発行など)があります。国家資格である士業は地域に根差したとてもローカルな仕事なので、日本がグローバル化しても、なくならない仕事だと言われています。
ところで博士にも「士」がついています。ところが博士は士業ではないようです。博士をもらっても仕事はついてこないのです。では、士業ではない博士は、どうやって自分の仕事を見つければよいのかを考えてみましょう。
そうなんですよね、いい研究しかないんです。
実は、パーソナリティーの要素は大きいのですが、最初に目に入るのは3. 博士のアイデンティティーでも書きましたが研究です。
同じ分野で就職したければ 研究 > パーソナリティー
企業などもう少し広い分野で仕事を探したければ、研究 = パーソナリティー
くらいかなという印象を持っています。
この辺はまたあらためて議論したいと思います。
どうでしょう、博士になりたくなりましたか?
「光あてて樹脂かたまる日記」は、私の専門分野である光硬化樹脂と雨降って地固まるをかけました。広辞苑によると、雨降って地固まるは「変事があってかえって前よりよく基礎が固まることのたとえ。」とあります。今の自分は、今まで研究してきた発泡成形に関する経験を生かして新たな研究対象を創出する大事な変化の時です。このことわざのように、変化があってかえって前よりよく基礎が固まることを目指して、変化に対する苦痛・恐怖を克服していきたいと思います。
2014/02/16
3. 博士のアイデンティティー
このコラムは博士(工学)の仕事について紹介しています。
もう3回目ですね。すごい。
今回は博士のアイデンティティの話をします。
博士を博士たらしめるものは何か。
博士後期課程の3年生の春頃は、博士課程の学生はとても不安な気分になります。
1. 投稿論文がアクセプトされるかな。
2. 学位論文が書けるかな。
3. 来年からの就職どうしよう。
4. 自分はいつごろ結婚するのかな。
5. 海外で働きたいけどコネがないな。
6. 日本で学者になりたいけど公募に通らない。
7. 企業はどうなんだろう。研究させてもらえるのかな。
8. 奨学金の返済どうしようか。
9. 指導教員の先生とうまくコミュニケーションとるにはどうすればいいんだろう。
10. 今年は何人卒業させることになるんだ。
11. この研究で論文書けるかな。
12. 国際会議の予稿がまだできていない。
13. 査読の返事を書かなくちゃ。
14. なんで自分がファーストじゃないんだ。
15. 装置が空かないし、壊れた。
などなど春は別れの季節であり、出会いの季節ですので、気分も虚ろになり、いろいろと悩む時期です。
このようなブルーな時期は必ず来るものですので、朝寝坊でぐっすり寝たり、山登りしたり、サイクリングに出かけると少しは気分が楽になります。
たいがい夏ころには、悩んでいてもしゃぁないという気持ちになり、気持ちは上向いていきます。とくに心配はいらいないです。あ~こういうもんかと。
こういう時期の博士後期課程学生と研究について1時間くらいディスカッションすると、実に興味深い反応が返ってきます。
研究についてディスカッションすると、どうしても論点を明確にし理解を助けるために、ややネガティブな質問をしなければならない時があります。
・ここの部分についてもう少し詳しく説明して。
・こういう研究を知っているんだけど君のとはどう違うの。
・その方法よりこうしたらいいんじゃないの。
・なんでこの研究しているの。
・そのロジックはちょっとおかしくない。
上記のような精神状態の時に、はじめてあった人にこんなことを言われると、
・すごい剣幕で必死にディフェンスする。
・ただ怒る
・どんどん凹んでしまいには黙り込んでしまう
・泣く
というような人がけっこういます。質問が核心をついているほど、反応は大きいものになります。
では、このような気持ちになるのはなぜでしょうか。マスターの場合はそれほどの反応は返ってきません。
例えば目の前で両親のことを悪く言われれば誰でも腹が立つし悲しい気持ちになりますよね。自分は両親の子であるというのは、人が持つ大事なアイデンティティーだと思いますから、それに対してネガティブなことを言われれば、そのような反応になるのは普通だと思います。
博士にとっての研究もそれに近い反応なのだと思います。自分が全力で取り組んできた研究にケチ(尋ねている方はそのようなつもりはありませんが)をつけられるのは、気分の良いものではないですね。こういう時は冷静にきっちり反論し、まだ、足りないところは質問してくれた人に助言を求められるような謙虚さを持つことが大切です。それができるようになるまでに、ちょっとした壁がそこにあるのですが、それを超えられれば、今度は冷静に対応できます。
というわけで、そろそろまとめの時間が来ました。
博士後期3年や博士取りたての人にとって、自分の博士論文の研究は、自分が研究者であるという唯一のアイデンティティーなのです。これをプライドという人もいます。研究に対してプライドを持て、と助言してくれる人もいます。学生や博士取り立ての人は、その人の名前や経歴ではなく、研究によってのみ認知(アイデンティファイ)されるのです。
では、ずっと研究はその人の唯一のアイデンティティーかというと、そうでもないんですね。これが。研究によって認知される本当の意味での職業研究者はなかなかいません。その仕事はとても大変だからです。
では、大学の博士はどうしているか。講義や大学の業務をしてサラリーをもらっています。企業の研究者も企業の中の雑務をこなしながら、例えば他の博士への助言や会社のリクルート活動など、サラリーをもらっています。博士だからといって、研究の対価だけで生活できるひとはそんなにいないのですね。
それからだんだん学会活動なので、少しばかり有名にになってくると、研究よりも名前あるいはキャラが立つようになります。○○さんの研究かぁ。とね。研究よりは名前が認知されてくるのです。これはこれで名前が売れて研究費がとりやすくなるなど、いいことも多いです。
でもたまには全く自分の名前が知られていない、かつ、レベルの高い国際学会に行って、自分が研究によってのみ認知されるという博士とりたての頃のフレッシュな気持ちを取り戻すのもいいものです。
どうでしょう、博士になりたくなりましたか?
もう3回目ですね。すごい。
今回は博士のアイデンティティの話をします。
博士を博士たらしめるものは何か。
博士後期課程の3年生の春頃は、博士課程の学生はとても不安な気分になります。
1. 投稿論文がアクセプトされるかな。
2. 学位論文が書けるかな。
3. 来年からの就職どうしよう。
4. 自分はいつごろ結婚するのかな。
5. 海外で働きたいけどコネがないな。
6. 日本で学者になりたいけど公募に通らない。
7. 企業はどうなんだろう。研究させてもらえるのかな。
8. 奨学金の返済どうしようか。
9. 指導教員の先生とうまくコミュニケーションとるにはどうすればいいんだろう。
10. 今年は何人卒業させることになるんだ。
11. この研究で論文書けるかな。
12. 国際会議の予稿がまだできていない。
13. 査読の返事を書かなくちゃ。
14. なんで自分がファーストじゃないんだ。
15. 装置が空かないし、壊れた。
などなど春は別れの季節であり、出会いの季節ですので、気分も虚ろになり、いろいろと悩む時期です。
このようなブルーな時期は必ず来るものですので、朝寝坊でぐっすり寝たり、山登りしたり、サイクリングに出かけると少しは気分が楽になります。
たいがい夏ころには、悩んでいてもしゃぁないという気持ちになり、気持ちは上向いていきます。とくに心配はいらいないです。あ~こういうもんかと。
こういう時期の博士後期課程学生と研究について1時間くらいディスカッションすると、実に興味深い反応が返ってきます。
研究についてディスカッションすると、どうしても論点を明確にし理解を助けるために、ややネガティブな質問をしなければならない時があります。
・ここの部分についてもう少し詳しく説明して。
・こういう研究を知っているんだけど君のとはどう違うの。
・その方法よりこうしたらいいんじゃないの。
・なんでこの研究しているの。
・そのロジックはちょっとおかしくない。
上記のような精神状態の時に、はじめてあった人にこんなことを言われると、
・すごい剣幕で必死にディフェンスする。
・ただ怒る
・どんどん凹んでしまいには黙り込んでしまう
・泣く
というような人がけっこういます。質問が核心をついているほど、反応は大きいものになります。
では、このような気持ちになるのはなぜでしょうか。マスターの場合はそれほどの反応は返ってきません。
例えば目の前で両親のことを悪く言われれば誰でも腹が立つし悲しい気持ちになりますよね。自分は両親の子であるというのは、人が持つ大事なアイデンティティーだと思いますから、それに対してネガティブなことを言われれば、そのような反応になるのは普通だと思います。
博士にとっての研究もそれに近い反応なのだと思います。自分が全力で取り組んできた研究にケチ(尋ねている方はそのようなつもりはありませんが)をつけられるのは、気分の良いものではないですね。こういう時は冷静にきっちり反論し、まだ、足りないところは質問してくれた人に助言を求められるような謙虚さを持つことが大切です。それができるようになるまでに、ちょっとした壁がそこにあるのですが、それを超えられれば、今度は冷静に対応できます。
というわけで、そろそろまとめの時間が来ました。
博士後期3年や博士取りたての人にとって、自分の博士論文の研究は、自分が研究者であるという唯一のアイデンティティーなのです。これをプライドという人もいます。研究に対してプライドを持て、と助言してくれる人もいます。学生や博士取り立ての人は、その人の名前や経歴ではなく、研究によってのみ認知(アイデンティファイ)されるのです。
では、ずっと研究はその人の唯一のアイデンティティーかというと、そうでもないんですね。これが。研究によって認知される本当の意味での職業研究者はなかなかいません。その仕事はとても大変だからです。
では、大学の博士はどうしているか。講義や大学の業務をしてサラリーをもらっています。企業の研究者も企業の中の雑務をこなしながら、例えば他の博士への助言や会社のリクルート活動など、サラリーをもらっています。博士だからといって、研究の対価だけで生活できるひとはそんなにいないのですね。
それからだんだん学会活動なので、少しばかり有名にになってくると、研究よりも名前あるいはキャラが立つようになります。○○さんの研究かぁ。とね。研究よりは名前が認知されてくるのです。これはこれで名前が売れて研究費がとりやすくなるなど、いいことも多いです。
でもたまには全く自分の名前が知られていない、かつ、レベルの高い国際学会に行って、自分が研究によってのみ認知されるという博士とりたての頃のフレッシュな気持ちを取り戻すのもいいものです。
どうでしょう、博士になりたくなりましたか?
2014/02/13
博士ってどんな仕事? 2. 博士は旅慣れている
2. 博士は旅慣れている
これは博士(工学)の仕事を紹介するコラムです。
今回は早くも2回目ですね。
研究をはじめようとするといろいろとわからないことが出てきます。そんなときは論文や専門書などの文献を読んだり同僚の博士に聞いたりするのですが、どうしてもわからない時は博士(わかる人)に聞きに行くことが一番です。
次に実験が始まると自分が所有していない装置で測定されたデータが必要になることがあります。そんなときは、装置を使わせてもらえる博士を探して、その人に頼みに行くことが一番です。その博士と研究についてディスカッションしていると思わぬ発見があり、研究が進むこともよくあります。
研究がまとまってくるとその成果を誰かに見てもらいたくなります。そんなときは学会に出かけます。日本国内でも毎月のように何らかの学会が開催されています。海外での国際会議と呼ばれる学会は、高級リゾートで行われる場合がほとんどです。学会主催者側としては、高級リゾートで学会を開くことでその学会にたくさんの人に来てもらいたいと考えているので、プライベートでは絶対行かないようなすごいところで学会があることもあります。飛行機で10時間くらいかけて年に何回も学会に出かけて、自分の研究を発表し、世界中の研究者とディスカッションします。自分の研究を紹介する以外にも他の研究者がどのような研究をしているか、世界的なトレンドはどのような方向に向いているのか、学会に出かけることは大事な情報収集の場でもあるのです。
研究成果を論文にして発表したり、国際学会に頻繁に出かけたりして、研究が評価されたり人望が備わってくると、国際会議に招待講演者として呼ばれるようになります。外国だと旅費の補助が出たりすることがあり、お得に海外に出かけて、自分の研究をアピールできます。
そのようなわけで、以下にまとめますように、だんだんと博士は旅慣れていきます。
- 研究内容を博士に相談しに出かける。
- 実験しに博士の研究室を尋ねて出かける。
- 研究成果を発表するために学会に出かける。
- 国際学会などに招待講演者として呼ばれて出かける。
どうでしょう、博士になりたくなりましたか?
博士ってどんな仕事? 1. 博士は書き仕事
1. 博士は書き仕事
博士の仕事はどんなものかこれから不定期に掲載していきます。
1回目のテーマは、「博士は書き仕事」です。
博士(工学)の仕事といえば、いろいろとな実験装置やビーカーやフラスコに囲まれて実験することが仕事と思うかもしれません。しかし、実際のところ、博士の仕事時間のほとんどは文章を書くことに費やされる場合が多いです。
- 実験をするための研究費を獲得するための申請書を「書く」
- 実験中に起こったことを実験ノートに「書く」
- 研究結果をまとめて発表するために講演要旨を「書く」
- 学術論文を「書く」
- 獲得した研究費の報告書を「書く」
- (1.に戻る)
- メールを「書く」、ホームページを「書く」
こんな風に研究に関わることだけでもたくさん書くことがあります。書くためには文献を読まなくてはならないし、なにより自分の頭で考えなくてはいけません。この自分の頭で考えるというところが博士の仕事です。書いているときは頭を使います。書くことでアイディアやデータを整理して、人に伝えることができます。これを仕事にしているのが博士です。
どうでしょう、博士になりたくなりましたか?
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